こんにちは。
今日は今季19年間の現役を終え引退された、元ロッテの小宮山悟投手がITmediaエンタープライズに掲載された記事を御紹介します。
「頭を使わない選手は何をしても駄目」
19年間のプロ野球生活にピリオドを打ち、今シーズン限りでの引退を表明しました。これまで長年にわたり身体を酷使していたので、少し身体を休めて、2010年1月からは
野球評論家としてプロアマ問わず野球界にかかわっていくつもりです。
それと並行してバイオメカニクスに関する研究も進めていきたいと考えています。わたしは2006年から2008年まで早稲田大学大学院
スポーツ科学研究科に在籍し、投球
フォームに関するバイオメカニクスを専攻していました。当時、教授に言われたのは、同じ145キロのボールでもなぜ1イニングと7イニングで球質の重さが変わるのかと。野球では一般的な表現ですが、野球を知らない人にとっては、同じボールなのに重く感じたり軽く感じたりというのは不思議で仕方ないというのです。実はボールの回転数が影響しているのはある程度認知されているので、回転数のどこを基準に球質の重さが変わるのかを明らかにできればと思います。
研究は好きですね。普段からいろいろなことに対して自然と疑問を抱くことが多い性格なので、その都度、
書籍などで調べものをしています。
勉強は好きではありません。試験合格や資格取得のために何とか知識を身に付けようとするのが勉強ですが、研究は極端な話、身になりません。わたしは身にならないものに費やす時間が好きなので、四六時中、頭の中でごちゃごちゃと考えています。
思考することはまったく苦になりません。現役時代、先発
ローテーションに入っていたころは1週間に1度しか試合で投げないため、時間がたくさんありました。チームの試合を見ながら「自分ならこうした、ああした」と日ごろからシミュレーションしていました。試合前の準備段階でかなり頭を使っていましたね。
ですから、自分自身で確立したデータを持っていました。例えば、球団から対戦チームの打者の情報などが提供されるのですが、さほど重視していませんでした。ある程度の傾向はつかめますが、あくまで自分のデータを活用していました。
主審も味方に
1997年に最優秀防御率投手になった要因として、データを十分に活用できたことが大きいでしょう。この打者はどういった球種が好きで、どのコースを見逃すかなどを把握していれば、早いカウントから打ってもらうよう仕向けて、球数を抑えることができます。2、3球で打者一人を処理するような投球をしていましたね。
人にはそれぞれ最大速度があるため、いくらそれ以上速く投げようとしても難しいわけです。けれど、遅いボールはいくらでも投げられます。全力で投げて140キロであれば、わざと少し抜いて135キロのボールを投げたり、同じ変化球でも速い変化球と遅い変化球を使い分けたりと、緩急はかなり有効に活用していました。
さらに当時は主審を味方につけており、カウントを容易に整えられたことも大きいですね。前シーズンや春季キャンプの投球を見てきており、コントロールが良いという先入観で判定するようになっていました。ある程度きわどいコースのボールはストライクと判断してくれました。いつもストライクを取るところに投げてボールと宣告されたら、少し含み笑いをして主審にプレッシャーをかけました。すると次からは間違いなくストライクになりました。
頭で理解できない選手は駄目
研究好きが功を奏したのか、野球人生を通じて多様な球種を習得しました。振り返ると、
小学生のときに投げたカーブが基本になっています。逆の回転を与えれば反対に曲がるし、回転の速さを変えれば曲がり幅が小さくなるだろうと仮説を立てて実践していました。誰にも教えられることなく変化球を投げるようになりました。
投げ方は身体で覚えるのも必要ですけど、それ以前に頭である程度理解していなければスムーズに習得できません。何人もの選手を見て築いた自論です。カーブの投げ方を教えてくださいとやって来る選手がいて、基本的なことは教えてあげるのですが、うまく投げられない。そうしたときに、「なぜ自分はカーブが投げられないのか」について深く考えない選手は何をやっても駄目でしょう。次の
ステップに進めません。きちんと考えられるかどうかが分かれ目だと思います。わたしの場合は、いつも「なぜ」というキーワードが頭の中にありました。そのため、次のステップに進むにはどうすればいいか、すぐに切り換えて考えていました。
ほとんどの変化球は投げられるのですが、どれだけ努力してもナックルボールは習得できませんでした。
バレンタイン監督からも投球の幅を
広げるために投げろと言われたため、投げ方を模索した結果、ナックルボールのような変化をする魔球「シェイク」が生まれました。ただし、正式なナックルボールではありませんし、ナックルボールを投げる人に対する敬意もあったので、シェイクと名付けました。
ところで、「投げる精密機械」「ミスター・コントロール」といったニックネームがあるそうですが、自分で名乗っているわけではないので勝手にしてくれという感じです。わたし自身はコントロールがかなりアバウトだと思っています。性格についても、完璧を求めているように見えて、意外と及第点は低いところに設定していたり、ざっくばらんなところがあります。気難しそうだという周囲のイメージとのギャップが大きいようで、初めて会った人に「こんな人だとは思わなかった」とよく言われますね。
あえて完璧主義のように振舞うこともあります。若手選手はわたしのことを怖くて近寄りがたいと言いますが、「近寄るな」というオーラを出していますし、実際に怖い部分もあるはずです。例えば、野球を教えてほしいと相談してくる選手には丁寧に教えてあげますが、きちんと体得できなかったり、頼んできたにもかかわらず途中で投げ出してしまうようであれば、二度と許さないという厳しい態度で接しています。(談)
記事中にあります「投げ方は身体で覚えるのも必要ですけど、それ以前に頭である程度理解していなければスムーズに習得できません。」というのは、その通りですね。
小宮山選手が仰っているのと解釈が違うかもしれませんし、イメージという言葉が適切かはわかりませんが、頭でどのように身体を使うのかが描けないと上手くいかないように思います。
また、「遅いボールはいくらでも投げられます」「全力で投げて140キロであれば、わざと少し抜いて135キロのボールを投げたり、同じ変化球でも速い変化球と遅い変化球を使い分けたりと、緩急はかなり有効に活用していました」というのは、投球のパフォーマンスにおいて有効であり、ヒントを与えてくれてます。
緩急というとストレートと変化球や変化球の種類でつけるものと思われますが、ストレートにスピード差を持つことで作れますからね。
高校生年代では難しいというかストレートで緩急をつけるという意識や発想があまりみられませんが、大学野球の関係者にお話を聞いたところこのようなことを実践している投手もいるそうです。
この記事は前編で今後、どのようなお話が聞けるのか楽しみですし、参考になります。